全国唯一の「ユメセイキうどん」専門店

長野県開発の小麦「ユメセイキ」に惚れた

信州うどん「おざんざ」の店「湯島春近」(www.haruchika.tokyo)はこの11月から、提供するすべての麺を長野県産のユメセイキうどんに切り替えました。ユメセイキうどんが、なめらかで粘りとこしがあり、なにより美味しいからです。店長の郷土愛もあり、今後はユメセイキのPRに務めていきたいと思います。

長野県開発の小麦粉「ユメセイキ」を使った「春近ほうとう」

「湯島春近は、日本で唯一のユメセイキうどん専門店です」
そう言い切ったのは長野市で製麺業を営む有限会社酒井製麺社長の酒井博正氏だ。酒井製麵は善光寺のお膝元、長野市で麺づくり100年の生麵専門店。
「柄木田製粉さんにも聞きましたが、すべてをユメセイキでという料理店は間違いなく湯島春近さんしかないです」。
取引が始まって間もなく、酒井氏が湯島春近に訪ねてきました。なにやら突然に、とんでもないことになりそうな予感がしました。現在、湯島春近のユメセイキうどん提供に、大きな力になってくれています。

何より調理人、荒井俊恵の決断が大きかった。
「コスト高は覚悟の上。とにかくお客様に美味しいと言われるものを出したい」
アンジャッシュ渡部建さんの近著「いい店の見つけ方教えます」で湯島春近が紹介された時、渡部氏に「攻めメニューのおざんざ店」と紹介された。おざんざ=うどん店として伝統の和風うどんの出汁にこだわる一方で、得意のイタリアパスタ、中国の担々麺まで手を伸ばす。それが評価されたためです。ここで肝心な麺そのものの味、ユメセイキうどんに出会ったことで、調理人としての夢は膨らむ。なにやら「鬼に金棒」という感じになってきました。

右:酒井博正氏 左:湯島春近の調理人、荒井俊恵

長野県産小麦「ユメセイキ」(千曲市のホームページより引用)

筆者はますますユメセイキに興味を持ち、ネット上で様々な情報を得たものの、いわゆるユメセイキ開発秘話みたいな話は出てこない。そこで以前から懇意の元長野県農政部長の白石芳久氏に電話を入れ、開発元の長野県農業試験所育種部長の酒井長雄氏に辿り着いたのです。酒井部長から聞いた実際の開発者は牛山智彦氏でした。牛山氏はすでに2年前に試験所を定年退職、現在は(社)長野県原種センターで依然として活躍しています。

「1990年当時、国産小麦粉は国内消費量のわずか8%ぐらい落ち込みました。圧倒的に強かったのがオーストラリア産のASWという小麦粉。私たちはこのASWを凌駕したいと燃えました。この頃は全国的な小麦粉開発ブームになりました。ASWの凌駕は私たちの大きな夢でした
と牛山氏。

結果、有名になったのが香川県の「さぬきの夢2000」で2000年に登録になっている。時同じくして長野県も「ユメセイキ」が。「夢世紀」とせずに「ユメセイキ」としたところが長野県らしいところ。あまり強く主張しない。ここは私たちがPRを買って出なくてはと思います。
「生産性が良くて、モチモチ感を出すためにモチ含有量を高める。約10年間の挑戦。県内で生産が可能かどうか、官能評価はどうか。これらを経て完成。その1~2年後の2001年に晴れて登録となりました」


「春近ほうとう」以外のユメセイキうどん

「春近ほうとう」用ユメセイキうどん

「ユメセイキ」はうどん用小麦だが、牛山氏はパン用小麦の開発にも取り組んだと言います。「ユメアサヒ」「ハナマンテン」「ゆめかおり
。特にハナマンテンは超強力粉に仕上がったという。

さて、ユメセイキだが、生産者は千曲市周辺が多い。それを長野県指定業者の柄木田製粉株式会社が製粉し、これまた長野県指定業者の有限会社酒井製麺が麺にする。その供給を受けて湯島春近の「おざんざメニュー」となる。酒井製麺の全ての麺出荷量のうち、ユメセイキを使う量はわずかにまだ4%足らず。いかに貴重な小麦粉、麺であるかが分かります。


見た目にも美しいユメセイキうどん

ユメセイキうどんの冷ざる

小麦粉の主な栄養成分は炭水化物のでんぷん。そのでんぷんの主な種類はアミロースとアミロペクチン。アミロースの成分を少なく抑えてアミロペクチンの成分を多くすることが粘りの強い歯ごたえのある麺になります。それまでに開発されたシラネコムギのアミロース含有量が30.2%であるのに対して、ユメセイキのそれは23.6%。ユメセイキは低アミロースの小麦粉なのです。

何とかユメセイキの夢を広げたい。

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